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2026年08月21日公開

Jリーグの猛暑・気候変動対策

子どもたちがサッカー選手を目指せる未来を守る

セーブアース セーブアース (第47回)

完全版視聴について

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ゲスト

1968年東京都生まれ。91年早稲田大学教育学部卒業。97年早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程(地球社会論)修了。早稲田大学ア式蹴球(サッカー)部、デンソーサッカー部(現FC刈谷)でプレー。99年よりアウトドアブランド「パタゴニア」に勤務、2009~19年日本支社長。22年よりJリーグ理事(非常勤)、23年より現職。

概要

 盛り上がりを見せたサッカー・ワールドカップが閉幕し、8月7日にはJリーグの新シーズンが開幕した。今年からJリーグは、これまでの2月開幕・12月閉幕から、8月開幕・翌年6月閉幕へと、開催時期を大きく変更した。30年以上続いたシーズンカレンダーを変える背景には、欧州主要リーグとの日程統一や国際大会との整合性に加え、年々深刻になる暑さへの対応もある。Jリーグ執行役員でサステナビリティを担当する辻井隆行氏は、選手とファン・サポーターの安全、そして選手のパフォーマンスを考えた結果だと説明する。

 これまでのJリーグでは、2月にシーズンが始まったあと、春にかけて選手の走行距離やスプリントなどのパフォーマンスが上昇し、暑くなる夏場には競技強度が低下する傾向があった。特に、時速20キロ以上で走った距離を示す「ハイインテンシティ走行距離」は、夏場に約2割低下するという。欧州主要リーグではシーズン開始から競技強度が上昇し、終盤には疲労によって低下するのに対し、日本では夏に谷ができる。暑さは選手の身体だけでなく、試合そのものの質にも影響しているのだ。

 もちろん、シーズンを移すだけで猛暑の問題が解決するわけではない。選手を守るため、Jリーグでは暑さ指数(WBGT)を活用し、試合開催の判断や水分補給に生かすほか、暑さが厳しい場合には試合中に「飲水タイム」を設けている。キックオフを夜間にずらすことも対策の一つで、将来的には屋内スタジアムや空調設備の導入も選択肢となる。

 しかし、問題はプロの試合だけではない。子どもたちがサッカーをする環境にも、すでに暑さの影響が及んでいる。人工芝のグラウンドでは、素材が熱を吸収し、夏場には表面温度が70度近くになるため、遮熱構造の靴でなければ足にやけどを負うこともあるという。

 Jリーグでは、ためた雨水を毛細管現象によって芝に供給し、気化熱でグラウンドを冷やす新しい芝の技術にも注目している。この技術は暑さ対策になるだけでなく、集中豪雨の際に雨水を一時的にためる機能も期待できる。

 実際、昨年、あるサッカースクールでは、夏の3カ月間に予定していた90回のうち65回が中止となり、開催できたのは25回だけだったという。暑さだけでなく、雷や大雨などの気象条件による中止も増えている。Jリーグの試合でも、2018年以降、気象を理由とする中止・延期が増えており、以前は年間数試合だったものが、平均で9~10試合にまで増えているという。

 ここで問われるのは、「暑さにどう適応するか」だけでよいのか、という点だ。

 辻井氏は、熱中症対策や開催時間の変更など、目の前の危険から選手を守る「適応」と同時に、気候変動の原因そのものに向き合う「緩和」が必要だと話す。JリーグもCO₂を排出する側である以上、自らの排出削減に取り組まなければならない。

 一方で、Jリーグの排出量だけをゼロにしても、気候変動そのものを止めることはできない。だからこそ、60のクラブがそれぞれの地域で、自治体や企業、学校、ファンなどを巻き込み、社会の仕組みそのものを変えていくことを目指している。

 その一例が、公共交通や再生可能エネルギーの利用を、地域の課題と結びつけた取り組みだ。クラブを単なるサッカーの興行主体ではなく、地域の人々をつなぐ「ハブ」として活用し、便利で使いやすい仕組みをつくることで、結果的にCO₂の削減にもつなげていく。こうしたロールモデルを60の地域で生み出し、互いの地域に広げていくことが、Jリーグの目指す方向だ。

 さらにJリーグは、英国発の「スポーツポジティブリーグ(Sport Positive Leagues)」にアジアで初めて参加し、各クラブの気候変動への取り組みを12の領域で評価・可視化することにした。順位をつける目的は、優劣を競うことではない。あるクラブの取り組みを別のクラブが取り入れることで、リーグ全体の活動を底上げすることにある。

 気候変動は、サッカーのように一つのクラブが勝てば、ほかが負けるというものではない。「みんなで勝たなければ、みんなが負ける」問題なのだ。

 猛暑は、もはや選手の体調管理だけの問題ではない。競技の質を下げ、試合を中止させ、子どもたちからサッカーをする機会を奪い、さらには「サッカーをする」という日常そのものを変えようとしている。

 かつて自分たちが当たり前のように享受してきた環境を、次の世代も同じように享受できるとは限らない。だからこそ、Jリーグが目指すのは、いまの選手を守ることだけではない。将来、子どもたちが「サッカー選手になりたい」と思ったときに、安心してボールを蹴ることのできる環境を残すことでもある。

 そのためには、暑さに適応するだけでなく、温暖化をこれ以上進行させない社会をつくる必要がある。サッカーを守ることは、サッカーだけを守ることではない。

 スポーツを通じて、未来の暮らしそのものをどう変えていくのか。Jリーグ執行役員の辻井隆行氏、環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。

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