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2024年01月27日公開

航空機の重大事故を防ぐために設けられた幾重ものセーフティーネットはなぜ働かなかったのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1190回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2024年04月27日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1983年愛知県生まれ。2001年国土交通省入省。03年航空保安大学校卒業。同年、那覇空港に管制官として赴任。08年、中部国際空港に赴任。主任管制官などを経て20年退職。

概要

 起きてはならない事故が起きてしまった。

 1月2日、羽田空港の滑走路上で着陸してきた日本航空の大型旅客機と離陸しようとしていた海上保安庁の小型航空機が衝突してしまったのだ。日航機は衝突後炎上したが、乗員の機敏な判断で379人の乗客・乗員は全員が間一髪で脱出に成功した。しかし、海保機は完全に大破し乗っていた6人のうち機長を除く5人が亡くなった。5人が亡くなっただけでも十分に悲惨な重大事故であることは言うまでもないが、今回の衝突事故は一歩間違えば400人近い日航機の乗客・乗員が命を落としていてもまったく不思議でない、非常に深刻な事故だった。

 ここまで出てきた情報では、離陸準備をしていた海保機が何らかの理由で管制からの指示を誤認、もしくは指示通りに動かずに、日航機が着陸してくる滑走路に出てしまったことが、無線交信記録などから分かっている。しかし、人間であれば誤認や勘違いなどのヒューマンエラーは容易に起き得る。指示を誤認しても直ちに重大な航空機事故につながらないように、羽田空港では幾重ものセーフティーネットが設けられているはずだったが、今回はその全てが破られてしまった。

 元管制官の田中秀和氏は、今回の事故では事故を未然に防ぐために少なくとも3つのセーフティーネットがあったはずだが、それがいずれも機能しなかったと指摘する。破られた1つ目のセーフティーネットは、過って滑走路に出てしまった海保機の機長や他の乗員が、着陸のために接近してくる大型の日航機になぜ気付けなかったのか。通常のルーティンでは滑走路に入るときに目視で周囲を確認することになっている。今回海保機がC滑走路に入るために利用したC5誘導路は、滑走路への進入角度が直角なため、右側を見れば、近づいてくる大型機の機影が容易に視界に入っていてもおかしくなかった。海保機側が周囲をチェックしていなかったか、チェックはしたが見えなかったか、見えてはいたが滑走路に進入しても問題ないと考えたのかなどは、現時点では分からない。

 2つ目は、なぜ管制は海保機の誤進入に気付けなかったのかだ。田中氏は、管制が気付いていたとすれば、直ちに日航機、海保機双方に指示を出すはずで、それが無線の録音に残っているはずなので、今回は管制が誤進入に気付いていなかった可能性が高いとの見方を示す。管制官の前には滑走路占有監視支援機能という監視モニターが設置されており、進入してはいけない航空機が滑走路に入れば、警告のためにその機影が赤く表示されるようになっている。海保機は誤進入した滑走路上に40秒間停止していたことが分かっており、40秒もの間、管制官が監視モニターを1度も見ないということは通常では考えられないと田中氏は言う。単なる見落としだったのか、管制官が40秒以上もモニターを見られないような、何か別の事象が管制塔内で起きていたのか。これも調査結果を待つしかない。

 そして、3つ目のセーフティーネットは、着陸しようとするJAL機の機長や副操縦士が滑走路上に停止している海保機に気付けなかったのかということだ。今回、日航機のコックピット内には3人の操縦士がいたが、誰も海保機を視認することができなかったのか。今回の副操縦士が資格試験のための訓練中だったことと関係があるのか。また、このエアバスA350という最新機種はフロントガラス上に機体の高度、速度などがヘッドアップディスプレイによって映し出されるような仕様になっている。そもそも夜の滑走路上に停まっている小型機を目視することは容易ではないが、このヘッドアップディスプレイがどの程度、コックピットからの目視の妨げになったのかは、現時点では分からない。

 それぞれのセーフティーネットがなぜ機能しなかったのかについては軽々に判断すべきではないとしながらも、自身が17年間那覇空港中部国際空港で航空管制官として勤務した経験を持つ田中氏は、他にどんな事情があったとしても、誤進入した海保機の存在に40秒以上管制官が気付けなかったことの責任は重いと言う。単なる見落としだったのか、それとも40秒間も滑走路や監視モニターを見ることが難しくなるような特殊な事象が起きていたのか、それも調査結果を待つしかない。

 ちなみにメディアでは盛んにストップバーライト(停止線灯)が稼働していれば事故が防げた可能性が取り沙汰されているが、それは的外れな指摘だと田中氏は指摘する。ストップバーライトは、全ての誘導路にあらかじめ赤信号を灯し、入るときには管制からの指示とともに赤信号が消える仕組みだが、それが一部故障していたことがメディア報道などで指摘されている。しかし、羽田空港ではこの機能は視程が600m以下の時のみ使用されることになっているため、仮に壊れていなかったとしても今回は使われていなかった。また、今回事故が起きた羽田空港のC滑走路には、C1からC14までの誘導路が順番に並んでいるが、両端を除くC3からC12は、そもそも管制から制御できるストップバーライトが設置されていない。

 ただし今後の改善点として、すべての誘導路にストップバーライトを設置し、天気や視界とは関係なくこれを常時稼働させるべきという議論はあり得るかもしれない。

 もう一つ気になる点は、過去10年にわたり、国土交通省の公務員の削減計画に合わせて、航空管制官の数も年々削減されている。数が減れば一人の管制官にかかる負担が大きくなることは間違いないが、しかし田中氏は単純に管制官の数が増えればいいという問題ではないと言う。今回なぜフェイルセーフが働かなかったのかを解明しない限り、人数だけ増やしたところで安全性は向上しないだろうと田中氏は言う。

 今回の事故で航空管制官という存在がクローズアップされているが、われわれは今まで管制というものについてあまりに知らず、任せきりで来てしまった。そもそも管制とはどのようなもので、今回の事故はなぜ避けられなかったのかなどについて、元航空管制官の田中秀和氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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