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2009年05月23日公開

臓器移植法に改正が必要な理由

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第424回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1963年神奈川県生まれ。85年ジョージタウン大学国際学部卒業。富士ゼロックス、日本端子を経て96年衆院初当選(自民党)。02年総務大臣政務官、05年法務副大臣を歴任の後、現在衆院外交委員長。当選4回(神奈川15区 )。

著書

1948年東京都生まれ。74年東京大学医学部卒業。国立小児病院神経科、東大病院小児科、千葉徳洲会病院院長を経て00年衆院初当選(社民党)。現在、党政審会長。小児科医。当選3回(比例南関東ブロック)。

1960年神奈川県生まれ。83年東京大学文学部卒業。88年東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。90年三菱化学生命科学研究所、04年科学技術文明研究所などを経て07年より現職。社会学博士。専攻は科学技術政策論。著書に『脳死・臓器移植と日本社会』、『先端医療のルール』など。(ぬでは木へんに勝)

著書

概要

 臓器移植法の改正をめぐり、国会が揺れている。現行法の制限を大幅に緩和する案と、むしろ規制を強化する案とその折衷案などが錯綜し、各党がこの法案については党議拘束をかけない方針を打ち出していることも相俟って、全く見通しがたたない状態に陥っている。日本の国会では珍しいガチンコ状態と言ってもいいだろう。
 1997年に成立した同法には3年後の見直しが定められていたが、施行後約10年間、一度も見直しは行われてこなかった。しかし、この5月にWHO(世界保健機関)の総会で臓器移植のガイドラインが変更され、移植臓器の国内自給が求められるようになるとの観測が飛び交ったことがきっかけで、国内でも臓器移植法の見直し機運が一気に高まった。
 実際は新型インフルエンザへの対応に追われたために、ガイドラインの変更は今年は行われないことになったが、WHOの動向にかかわらず、国会では臓器移植法の審議が来週にも始まろうとしている。
 これまで改正案としてはいずれも議員立法で、臓器移植をより容易にするA案、現行法を踏襲しながら、臓器提供者の対象年齢を15歳から12歳まで引き下げるB案、脳死判定基準をより厳格化するC案の3案が国会に提出されていたが、いずれも過半数の支持を得られる見通しは立っていなかった。そこで今月15日に自民党の根本匠議員、民主党の笠浩史議員らが新たな妥協案としてD案を提出し、衆議院の厚生労働委員会で来週AからDまでの4案の質疑が行われる予定だ。
 97年に日本で初めての臓器移植法が法制され、本人の書面での提供意思の表明と家族の同意があれば、日本でも脳死となった人から臓器を取り出して移植を行うことが可能になった。しかし、これまでの12年間での脳死移植は81件しか行われていない。今年4月末現在、12,240人が臓器移植を待っている状態にある。また、現行法では15歳未満の臓器提供は認められていないため、臓器移植を必要とする子どもは、高額の費用を負担して海外で移植を受けるか、ドナーに後遺症が残る危険を冒して生体移植を受けるしかない。
 これらの点を問題視して提案されたのが、年齢制限をなくし、本人の意思表示がなくても家族の同意のみで臓器提供を行うことができると定めたA案だ。A案は本人から生前の意思表示が無かった場合は、臓器提供の意思ありと推定されるため、脳死移植は大幅に増える可能性が大きい。また、A案はあくまで家族の同意が前提となるため、臓器提供者に年齢制限を設けていない。
 しかし、A案では本人があらかじめ臓器提供を拒絶する意思を表明できる上、本人の意思にかかわらず家族は臓器提供を拒否できるため、「どなたにも意思に反したことを強制しない」とA案の提案者で自ら生体肝移植のドナーとなった経験を持つ自民党の河野太郎衆議院議員は説明する。
 一方のC案は、一概に脳死を人の死としない現行法の考えを踏襲した上で、現行の脳死基準をさらに厳格化することで、脳死後も何年も心停止に至らない例も数多くみられるなど、医学的にも脳死を人の死とすることへの疑問に答えようとする立場をとる。
 また、4案の中で唯一生体臓器移植を親族間のみに限定する規制を含む。C案の提案者で社民党の阿部知子氏は、自らの小児科医としての経験に基づき、脳死を一律に人の死としてしまうことにリスクを訴えた上で、その一例として臓器移植以外の医療が十分に施されていない問題を指摘する。
 B案は現行法の年齢制限を15歳から12歳に下げるもので、D案は現行法から年齢制限を削除するというもの。いずれも、国内では移植を受けられない日本人の子どもが、海外で移植を受けている事態にのみ対応した案だ。
 臓器移植は臓器を提供する側と移植を受ける側の立場の、どちらから考えるかによって、180度見え方が変わってしまう性格があるため、非常に判断が難しい。しかし、科学技術政策論の専門家で20年臓器移植法を研究してきたぬで島次郎氏は、まず臓器移植問題と「脳死は人の死か」の死生観をめぐる議論は分けて考える必要があると説く。脳死を人の死とするかどうかについては、まだ決着がついておらず、問題の語られ方もこの20年変わっていないと言う。これはまた臓器移植が進んでいる海外でも決着がついているわけではない。この議論を始めると泥沼にはまってしまうとぬで島氏は言う。
 臓器移植をめぐる真の争点は、日本人の死生観ではなく、死後の臓器の摘出に本人の同意を必須とするかしないかにあり、4案の審議もその点に絞るべきだとぬで島氏は主張する。人権の最も基本である人身の不可侵を守るのが本人同意であり、どういう場合に本人同意を外すことが許容されるべきかを決めることが、臓器移植における本質的な論点であるべきだというわけだ。
 また、ぬで島氏は現行法では、生体移植がまったく規制されていないため、日本の生体移植の件数が海外に比べて非常に多いことが、逆に日本で脳死移植が増えない原因にもなっている可能性があると指摘する。その意味でC案は生体移植を近親者に限定するルールを備えており、この点では合意できる可能性がある。
 ぬで島氏はこの法案では、AからDのどれか一つを選ぶのではなく、条文ごとに受け入れられるものを選んでいく「逐条審議」を行うべきだと主張しているが、日本の国会では慣例により、逐条審議は行われていない。
 今週のマル激では、来週にも本格的に審議入りする臓器移植法改正案の論点を2部構成で徹底的に議論してみた。まずPart1ではA案提出者の自民党河野太郎衆院議員とC案提出者の社民党阿部知子衆院議員をスタジオに招き、両議員が考える現行法の問題点やそれぞれが提案する案のポイントをディベート方式で議論してもらった。(Part1は無料放送中)
 そしてPart2は、ぬで島氏とともに、前半の議論を踏まえて、臓器移植問題の争点をさらに掘り下げた。(ぬで島氏のぬでは木へんに勝)

 

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