放射能に分断されるコミュニティの現実

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第630回)

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公開日 2013年05月11日

ゲスト

首都大学東京都市教養学部准教授

1969年富山県生まれ。九州大学人文学部卒業。同大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程中退。九州大学文学部助手、弘前大学人文学部准教授などを経て2011年から現職。著書に『東北発の震災論 ー 周辺から広域システムを考える』、『限界集落の真実 ー 過疎の村は消えるのか?』、共著に『3・11以後 何が変わらないのか』など。

著書

「とみおか子ども未来ネットワーク」代表

1970年福島県生まれ。93年から福島県富岡町に暮らす。2011年東日本大震災に伴う福島第一原発事故以降、東京で避難生活を続ける。12年市民団体「とみおか子ども未来ネットワーク」を設立し、代表に就任。各地でタウンミーティングなどを開催して被災者の現状を伝えつつ、富岡町の復旧に向けた活動を続けている。

概要

 「速やかに避難住民の帰還を実現させたい」

 これは2011年12月16日、当時の野田佳彦首相が福島第一原発事故の収束宣言を行った際の記者会見での一節だ。そして、それ以降政府は、避難地域の住民の帰還に向けた歩みを加速させてきた。

 昨年以降、国は11の自治体に出されていた放射線量別の3種類の避難区域を、年間被曝量が20ミリシーベルト以下、50ミリシーベルト以下、そしてそれ以上の3つの区域に新たに再編し、20ミリシーベルト以下の区域を「避難指示解除準備区域」に指定した上で、基本的に立ち入り制限を解除した。野田前首相の言葉通り、「帰還」の実現に向けていよいよ舵を切ったようだ。

 しかし、福島の現実は「帰還」にはほど遠い。放射線量にもばらつきがあり、除染も一向に進んでいない。立ち入りが自由になったと言っても、下水、浄水などのインフラもないし、警察や消防機能も復旧していないため、住民たちは自分たちで防犯パトロールを行わなければならない。

 そして、被災地では更に困った問題が持ち上がっている。帰還が可能な区域とそうでない区域への再編が、新たなコミュニティの分断を生んでしまっているのだ。

 町内に帰還が可能な区域とそうでない区域を抱え込んだ自治体の一つが、福島県富岡町だ。町は全域があの福島第一原発から20キロ圏内に含まれ、これまでは警戒区域として立ち入りが全面的に制限される「全町避難」の自治体の一つだ。事故から2年以上が経過した今も、町民は日本全国47都道府県に分散したまま避難生活を強いられ、町役場も郡山市郊外に仮のプレハブ庁舎を設け、かろうじてその機能を維持している状態だ。

 その富岡町が昨年末に行った町民へのアンケートでは、町に帰らないと答えた人の比率が4割に達し、帰りたいと答えた人の15%を大きく上回った。富岡町職員の菅野利行氏は「帰れ帰れと言っても、実際には何も進んでいない。帰れるような状態にはない」と、町民の置かれた苦しい立場を代弁する。

 東京で避難生活を続ける富岡町民の市村高志氏は「自分たちが住んでいた町が今どういう状況に置かれているかも分からない。町民として何を信じて判断すればいいのか何の手がかりもない」と話す。国や東電が進める帰還スキームは、どのような考えに基づいて進められていて、被災地をどのように復旧させていくのかがまったく分からない中で、帰るか帰らないかだけを問われても、答えようがないと言うのだ。

 被災地の支援活動を続けている社会学者で首都大学東京准教授の山下祐介氏も国・行政の姿勢に疑問を呈する。「皆さんの復興は国がやりますと言っておきながら、結局は自治体や住民自らがやらないといけない状況になっている」と指摘する。

 そのような先が見えない状況が続くなか、富岡町では「帰りたいけど帰れない。戻りたいけど戻らないという町民が増えてきている。戻りたい住民と戻らない住民の分断も見られる」とこれまで分散されながらも辛うじて絆を保ってきた町が、ここにきていよいよ空中分解する恐れが出てきていることを市村氏は危惧する。

 放射能が分断したコミュニティをどう再生するのか。汚染された土地にさっさと見切りをつけて、新しい地で生活を再建することが正解なのか。戻りたい人だけ戻ればいいのか。そのような土地に共同体を再構築することが本当に可能なのか。そのような状況の下でも、国は被災地に帰れというのか。富岡町民の市村高志氏と被災者支援を続ける山下祐介准教授を迎えて、ジャーナリストの神保哲生を社会学者の宮台真司が議論した。

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