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2022年07月02日公開

日本の凋落を止めるためにやらなければならないこと

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1108回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2022年10月02日23時59分
(終了しました)

ゲスト

金融教育家、元ゴールドマン・サックス金利トレーダー
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1978年兵庫県生まれ。2001年東京大学工学部卒業。03年同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。同年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングを経て19年退職。著書に『お金のむこうに人がいる』。

著書

概要

 近年の日本の国政選挙では自民党が過去6度にわたり連続で勝利をおさめ、政権の座にとどまってきた。その間、特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の容認、共謀罪の導入など、国論を二分する大きな政治的争点がいくつもあったが、そうした政策が選挙で厳しく問われたことは一度もなかった。

 選挙後の出口調査などによると、その間、有権者の投票行動に最も大きな影響を及ぼした争点は経済問題、とりわけ個人のお財布に直接影響を与える消費税景気対策などだった。そしてそのキーワードとして使われてきたのが、アベノミクスだった。

 しかし、昨今の円安と物価高の下、さすがのアベノミクスもいい加減にメッキが剥がれてきた感が否めない。

 ところが、翌週に迫った参院選の各党の公約などを見ると、なぜかアベノミクスに代わる経済政策が争点として打ち出されていない。アベノミクスと明確に一線を画した経済政策を打ち出しているのは、れいわ新選組くらいのものだ。政府の補助金により人為的に170円台に抑えられているが、ガソリン価格がリッターあたり200円を超え、食料品を含むあらゆる商品の物価が2割も3割も高騰しているにもかかわらず、有権者の多くは本当にこれまでの経済政策の継続を望んでいるのだろうか。

 問題は目先の円安や物価高だけではない。日本は過去30年間、世界の中で唯一、ほとんど経済成長がなく、賃金の上昇もなく、あらゆる経済指標で世界の中でのランクを落としてきた。一時はジャパン・アズ・ナンバーワンとまで囃された日本が、今や先進国の中では大半の経済指標で最下位グループまで落ちており、時間の問題で先進国としてのステータスを失うところまで来ている。確かにマスメディアがそうした問題をほとんど真正面から取り上げないので、日本の先行きに対する危機感が社会全体で共有されているとは言い難いが、それにしても国政選挙でそれが全く問われないという状況は異常としか言いようがない。

 元ゴールドマン・サックス証券の日本国債の金利トレーダーで、現在は金融教育家としてトレーダー時代の経験をもとに独自の視点からおカネや経済の問題を若者らに解説している田内学氏は、昨今の円安とインフレは、これまで日本が抱えていた課題が一気に吹き出したものなので、インフレで困っている人を補助金で助けたり、金利を上げるなどの対症療法ではなく、根治治療が必要だと語る。そして、そこでいう日本の根本的な問題は、ひとえに人を育ててこなかったことにあると田内氏は言う。

 経済政策を巡る議論は、とかく専門的になりがちで、結果的に経済学の流派間の神学論争的な様相を帯びる傾向がある。また、常に特定の定理を当てはめなければならないとされるなど、一般人にはなかなか取っつきにくいところがある。しかし、田内氏は自身のトレーダーとしての経験から、経済問題の本質はおカネではなく、「人」、とりわけ「誰が働くのか」という点にあるという独自の視点から、今日本が抱える問題を解説する。

 例えば田内氏は、巷でよく聞く、積極財政の是非や借金で日本が財政破綻するといった議論は、経済学的にはそれぞれ根拠のあるものなのかもしれないが、働く人という視点が抜け落ちていると言う。老後に2,000万円が必要になるという有識者会議の議論が表に出て、2,000万という数字が独り歩きしているが、仮に2,000万円を貯めても、その時に必要とされるサービスを提供する人がいなければ、その2,000万円は無用の長物となってしまう。

 「赤字国債を発行し続ければ早晩日本の財政は破綻する」という議論に対する、「自国で通貨を発行している国は財政破綻はしない」という議論について田内氏は、確かに通貨発行権を持つ日本はギリシャのような財政破綻はしないが、国内の生産力が低下し、政府の借金が国外の生産力に頼らなければならなくなれば、国民は必要な物資が手に入らなくなり、いつかは「経済破綻」することになる。つまり借金の額や通貨発行権の有無といったおカネの話は本質的な問題ではなく、社会を支えるために働く人を日本が確保できているかどうかが根本問題なのだと田内氏は語る。

 その観点から見た時、今の日本は非常に心配な点が多い。まず、人が生きていく上で必須となるエネルギー食料の大半を輸入に依存している。エネルギー問題については先週のマル激でも議論したが、純国産のエネルギー源となり得る再生可能エネルギーを本気で増やそうとすらしていない。食料についても、コメだけは高い自給率を誇るのに対し、小麦や大豆は極端に輸入依存度が高く、昨今の物価高は円安と小麦価格の高騰が家畜の飼料や農業の肥料費を直撃した結果だ。

 食料安全保障やエネルギー安全保障上は、こうした物資を輸入に依存していることは懸念材料ではあるが、それでもそれと引き換えに日本から輸出できるものがあるうちはまだいい。しかし、それが近年では翳りを見せている。かつて日本は輸出大国だったが、最近は貿易収支も赤字に転じつつある。つまり日本は海外から欲しがられるものを作れなくなっている一方で、相変わらず国民生活に重要なものを輸入に頼り続けているのだ。

 田内氏はおカネの流し方を変えて、国内の生産力を有効に使う方法を考えることが、今の日本にとって最優先の課題だと言う。このままでは少子化によって労働人口は確実に減っていく。しかも、近年の日本は労働生産性もイノベーション率も先進国の中では低位に沈んだままだ。

 おカネの問題に目を奪われていては本質を見誤る。問題はどれだけ使うかではなく、どう使うかにある。そして日本が、世界が欲しがるモノやサービスを提供できる人を育て、最終的に日本で働く人の元にそのおカネが流れるようにすることが、最も重要な経済政策となると主張する田内氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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