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2008年05月24日公開

自動車産業が日本から消える日

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第373回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

明治大学政治経済学部客員教授

1946年埼玉県生まれ。1972年 東京工業大学大学院理工学研究科修了。同年三菱総合研究所に入社。取締役本部長、常勤監査役、上席研究理事などを歴任し、07年に退社。同年より、現職。著書に「日本ものづくり優良企業の実力」、共著「世界自動車メーカー どこが一番強いのか?」など。

著書

司会

概要

 2007年、トヨタ自動車が、自動車生産台数でGMを抜いて初めて世界のトップとなった。トヨタの08年3月期の営業利益は、過去最高を記録し、世界各地に積極的に拠点作りを進めた成果が実ったとされているが、その一方で、09年3月期の営業利益は3割減という厳しい予想を発表している。他の日本のメーカーも09年3月期の営業利益について、軒並み3割減から、5割減という厳しい見通しを出している。
 決算発表の席で、渡辺捷昭トヨタ自動車社長は「昨年後半から今年に入って潮目が変わった」と語り、日本の自動車産業を取り巻く環境に大きな変化が起きていることを示唆した。今回は、その大きな変化とはなにか。そして、一見我が世の春を謳歌しているかに見える日本の自動車産業の深層で何が起きているのかを、自動車産業に詳しい明治大学政治経済学部客員教授の土屋勉男氏を招いて議論をした。
 世界を席巻してきた日本の自動車産業は現在、ふたつの大きな問題に直面していると土屋氏は語る。ひとつが、2013年のポスト京都議定書をにらんだ環境対策であり、もうひとつが、インドや中国など新興国のメーカーとの競争だと言う。土屋氏は、この2つは、これまで日本の自動車メーカーが直面してきたものとはまったく質の異なる戦いを強いられていると指摘する。
 今まで、日本の自動車産業は、危機にいち早く対処することで、ピンチをチャンスに変えてきた。70年代、80年代は、石油ショックや米国の排ガス規制にいち早く対応し、燃費のいい小型車を他国のメーカーに先んじて投入することに成功した。90年代の円高には、徹底的な合理化と現地生産を進めることで乗り切った。00年代の地球温暖化対策に対しては、いち早くハイブリッド車の実用化を実現し、圧倒的な優位を保った。しかし、これまでのような、優良な技術を開発し、対応を素早く行うだけでは、これからの市場の変化には対応できないと土屋氏は憂う。既に欧州のメーカーはクリーンディーゼル車普及のために連合を作り、そこにホンダも一部加わった状態で、さながら「トヨタ包囲網」が形成されている。
 また、今後の市場については、これから需要が拡大する中国やインド、ブラジルなど新興国に、日本メーカーも焦点を移さざるを得なくなっている。しかし、新興国の市場は、欧米の市場とはまったく異質であり、日本のメーカーの苦戦が見込まれる。インドのメーカー・タタが発表した「ナノ」は、25万円台という低価格で、インド国内の中流層をターゲットにしているが、このような低価格のエントリーカーが今後世界標準になる可能性は高い。そうなったとき、日本のメーカーの、高い技術に裏打ちされた伝統的な高付加価値戦略が通用するのか。また、日本の自動車メーカーが果たして、低付加価値戦略に転じることができるのか。土屋氏は疑問を投げかける。
 一方、国内の市場に目をやると、若者の車離れやガソリン価格の高騰などから、日本では今年に入って3ヶ月連続で自動車の保有台数が減少し、自動車市場の縮小がいよいよ現実のものとなっている。今や、日本の主要メーカーの多くは、海外での生産台数が国内生産を上回っており、利益の多くを海外で得ている自動車メーカーが日本に本拠地を置き続けるメリットは失われつつある。
 しかし、20世紀の日本の経済発展を支えた日本の自動車産業が直面する挑戦は、「ものづくり」という21世紀の日本の国作りの柱となる理念にも、大きく影響する。ものづくりを失った日本は、この先何を糧として国を興していくのかも、考えなければならないだろう。
 今回は、一見絶好調のように見える日本の自動車産業の裏で起きている未曾有の変化について、議論した。

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