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2010年05月22日公開

なぜ日本経済の一人負けが続くのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第475回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授
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1940年東京都生まれ。63年東京大学工学部卒業。72年エール大学経済学博士号取得。64年大蔵省(現財務省)入省。主計局、一橋大学教授、東京大学先端工学研究センター長などを経て01年退官。スタンフォード大学客員教授などを経て05年より現職。著書に『1940年体制』、『経済危機のルーツ』、『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』など。

著書

概要

 08年の金融危機から世界経済が着実に回復へと向かう中、日本だけが取り残されている。経済危機の震源地だったアメリカが、2007年から2011年までの間に3.6%の成長を見込む一方で、日本はその間2.7%ものマイナスの成長となっている。これは他の先進国と比べても特に低く、日本一人負けの様相と言ってもよい。
 かねてより日本経済の構造問題を指摘してきた早稲田大学大学院ファイナンス研究科の野口悠紀雄教授は、この最大の理由は、日本経済が依然として輸出依存型製造業中心の古い構造から抜け出せてないからだと言い切る。
 たしかにリーマンショック後の金融危機における日本企業の傷み方は、アメリカ以上に大きかった。企業利益の落ち込みは、米国企業が3割だったのに対し、日本は7割以上にも及んだ。
 2002年以降の日本の好景気は、アメリカの消費拡大に伴う自動車などの輸出増に大きく依存していた。そして、アメリカの自動車販売の好調ぶりは、経済危機の原因とされたサブプライムローンなどの住宅ローンと密接に関係していた。多くのアメリカ人が、住宅価格が値上がりを続ける中で、住宅を担保にしたローンで自動車を購入していたからだ。これは住宅価格が暴落すれば一気に萎むバブルに過ぎなかったと野口氏は言う。
 経済危機は各国を等しく襲うが、製造業の占める割合が高い日本は、経済危機で輸出が冷え込むと、たちまち設備過剰となる。しかし、製造業の設備過剰は簡単に解消することができないために、日本経済の回復が遅れているのだと野口氏は指摘する。
 一方、危機の震源地のアメリカの回復が早かった理由は、アメリカがすでに産業構造の改革に成功しているためだ。野口氏によれば、アメリカは70年代、80年代に日本の工業製品が大量に入ってきたことで、脱製造業化を余儀なくされた。その過程で貿易摩擦や失業などの痛みは伴ったが、現在は製造業の比率が日本の半分ほどしかない脱工業化経済を達成している。組合が強く政治力のある自動車産業だけは、構造改革に失敗したため、金融危機で致命的な痛手を受けているが、脱工業化の結果生まれてきた金融業やIT産業など世界の先端産業の成長が、アメリカ経済の回復を支えている。製造業を守り、経済構造改革に失敗した日本と、既にそれを完了していたアメリカの差が、ここに来て両国経済の明暗を大きく分けていると野口氏は言う。
 90年代以降、韓国、台湾、中国などの新興国が次々と工業化し、賃金の安いそれらの国と製造業で競争しても勝負にならないことは明らかだった。ちょうど日本から攻め込まれたアメリカが脱工業化を図ったのと同じように、そこで日本は脱工業化・産業構造の転換を図る必要があったが、日本は金融緩和、円安、緊縮財政で輸出依存型の製造業を保護する政策をとった。要するに古い産業構造を延命させたということになる。その間政権の座にあった小泉内閣は、構造改革政権と呼ばれることが多いが、野口氏はこれを言下に否定する。小泉・竹中路線は構造改革などではなく、むしろ旧来の産業構造を守る政策だったと、これを一蹴する。
 日本経済が復活するためには、真の産業構造改革が必要だが、それはまさにアメリカが経験したような、厳しい痛みを伴うと野口氏は言う。日本人が自らの手で痛みの伴う構造転換を図れないのなら、日本は一度廃虚にならなければ、新しいものは生まれない。 そう言う野口氏が提言する、日本経済復活のための処方箋は苛烈だ。しかし、将来世代のためにもいま大転換をしなければ、日本の未来はないと言い切る。
 日本経済が生き返るためには何をすべきか、日本の進むべき道はどこにあるのか、構造改革論の大御所と称される野口氏と議論した。

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